製薬メーカーのTVコマーシャル
最近、製薬メーカーのテレビコマーシャルをよく見かけるようになりました。タイプとしては、大きく3つに分かれると思います。
1つめは、会社自体の認知度向上、イメージアップを狙ったCMです。
最近の例では、合併して新会社になった第一三共が、俳優の渡哲也を起用したCMが目立っています。いかにもギャラが高そうな渡哲也が登場して、「どこの薬かな?第一三共か」という演技をするだけですが、さすがは大物俳優だけに、存在感があって目を引きますね。新会社の認知度アップだけではなく、合併後の同社社員に愛社精神をもたせ、モチベーションを向上させる施策(経営用語ではPost Merger Integration施策)としても有効なのではないでしょうか。
その他には、テルモやニプロといった医療機器に軸足があったメーカーが、医薬での認知度向上を企図したCMも目立っていると思います。
2つめは、新しい領域の医薬品の患者(消費者)への認知度向上(啓蒙)を意図したDirect To Consumer (DTC)のCMです。
DTCは、一般消費者(潜在患者)が「病気なのかどうかわからない」領域において、「そのような悩みがある人は病院で医師に相談してください」と知らせるPull 戦略が目的です。これまで、ED、うつ病、養毛などの例がありました。
最近では、アステラス製薬とサノフィ・アベンティスが共同で、睡眠導入剤のCMを大々的に展開しているのが目立っています。こちらは俳優ではなく、元NHKキャスターの草野満代さんと、順天堂大学病院の河盛隆造教授による「生活習慣病に起因する睡眠障害について」の対談形式の堅い感じのCMです。河盛教授は、糖尿病や内分泌の世界では知らない医師はいない有名な方ですので、このCMは一般消費者向けだけではなく、クリニックなども含む医師向けにインパクトが強いCMだと思います。
3つめは、ジェネリック医薬品のCMです。
この領域は、厚労省が医療費削減のためにジェネリック比率を欧米並みに高めたいという意図と、患者や病院経営者のコスト意識向上とともに、少しずつメジャーになりつつあります。
以上のように、これまで医科向け医薬品企業は、マスメディアによる広報活動(特にテレビコマーシャル)にはあまりエネルギーを注ぐ必要はありませんでしたが、今後はますますその重要性が増していくでしょう。特に各社が、いかに企業の独自性を出すか、いかにCMの費用対効果を向上させるか、優秀な広報スタッフをどのように育成するかといった点で、知恵を絞っていくことになりそうです。
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