医療のグローバル化とその課題
雑誌「NEWSWEEK 日本版」の3月5日号に、『医療観光』と題した特集記事がありました。
http://nwj-web.jp/cover/contents/20080305.html
最近、途上国の医療技術が進歩してきたため、医療に国境がなくなりつつある。先進国から、安い費用で手術や治療を受けられる途上国を訪問する「医療ツーリズム」の市場が拡大している。
・昨年、治療のために外国を訪問した医療ツーリストは、イギリスで7万5000人、アメリカでは50万人以上。
・アジアの医療ツアーの市場規模は、10億ドル(1000億円以上)。年率30%で成長。各国が新しい産業として、医療ツアーに力を入れ始めている。
・人間ドック、美容整形、歯科などが多いが、不妊治療、心臓バイパス手術、人工股関節置換手術、更には、子宮全摘手術、臓器移植までがある。
・例えば、タイのバムルングラード国際病院は、心臓疾患から、アレルギー、睡眠障害まで、多様な病気の治療を手がける巨大施設で、年間45万人の外国人患者がくる。医師900人、看護士800人の他、数百人の通訳が待機する。
・最大の魅力は、やはり費用の安さ。例えば、米国で3万ドルの心臓手術が、インドでは4000ドルで受けられる。外国人がインドで手術を受けると、平均的には米国の数分の1。フライトや滞在費を考慮しても、割安感は大きい。
NWでは日本については特に触れていませんが、日本でも最近は、芸能人が先進的な不妊治療のために米国に行ったり、ガン検診+観光ツアーで韓国に行ったりということを耳にするようになっています。
あらゆる業界で「グローバル化」「ボーダーレス化」は避けられない方向ではありますが、医療については、以下の課題がありそうです。
1.安全・リスク管理の課題
医療である以上、医療ミス、合併症のリスクは常に存在する。術後のケアも気軽にはできない。問題が起きた時、補償を得ることも難しい。
2.医療従事者のグローバル化の課題
途上国の多くが医師不足であるのに、給料などの条件がよいため先進国で働く医師が多いことはこれまでも国際的な問題であった。それに加えて、途上国に残った医師までが、自国民ではなく先進国の患者を優先することは、既にいくつかの国では問題となっている。
3.医療倫理の課題
医療が金儲けの手段になりすぎると、様々な倫理的な問題が発生する。不妊治療では、体外受精用の卵子提供や代理出産をどこまで認めるかは大きな議論である。また、臓器移植などでは、貧困層が犠牲になりやすい臓器売買の温床になる可能性がある。
1-3の課題に対して、将来的には、国際的なガイドラインを作成することが望ましいのでしょうが、当面は患者の自己責任・自己判断にならざるを得ないのでしょう。
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